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フィリピン留学体験記
   派遣生:Tさん(三島市) 留学期間2016年7月〜2017年5月

10ヶ月間の留学生活を振り返ってみると、それは「楽しかった」や「辛かった」という言葉では表しきれないものであったと思う。

 2016715日。私はフィリピンでの生活をスタートさせた。日本と同じアジアという枠組みに属するこの国だが、何もかもが日本とは違っていた。7000を超える島々、使用される言語は80以上。スペインやアメリカ、日本、中国の文化が混在している面白い国であった。そんな環境でたくさんの刺激を受けながら生活していたわけだが、一番の思い出はやはり「トイ・ギビング」であろう。

 
 フィリピンでの生活に慣れれば慣れるほど、「貧富の格差」を意識せざるを得なかった。家がなく外で物乞いしながら生活しているのは大人だけではなかった。学校の周りや教会の近くで空き缶で作った楽器を演奏してお金を稼ぐ子どもたちの姿に私たち留学生はひどく心を痛めた。貧困を打破することはできないが、何とかして子どもたちに楽しい思い出を作ってあげることができないか、どうにかして外の文化に触れさせてあげることはできないかと相談してできたイベントが「トイ・ギビング」だ。

 クリスマスの日、ストリートチルドレンを集めて簡単なゲームをして遊んだり、おもちゃをプレゼントしたりするのがこのイベントの目的だった。配るおもちゃを集めるために地域の人たちにいらなくなったおもちゃはないかと呼びかけた。当日ストリートチルドレンを集めるために広告作りもしてもらった。大人にもなり切れていない私たちの発案だったがたくさんの人の協力を得ることができ成功した。

 この活動を通し、子どもたちの嬉しそうな顔や素直さに感動したのはもちろんだが、思わぬところで思わぬ影響を与えていたことに驚いた。この「目に見える貧困」を現地の人たちは見て見ぬふりをしているのだが、私たちがこうしたアクションを起こすことでもう一度自分の国の現状に考えさせられたという人が多くいたのだ。そして多くのおもちゃを寄付してくれた。ただ子どもたちのためだけを思って活動していたが、結果的にこういった意見を得られたことは本当に嬉しかった。

 
 フィリピンに留学して改めて発展途上国の現状、特に貧困について考えさせられた。私たち日本人は壮大な自然だけに注目しがちだが、ちゃんと暮らせない人たちがいる、学校に行けない子どもたちがいるということも考えなければならないと思った。またどんなに微力でも何かのためにできることはたくさんあるということも学べた。

「語学力を習得しに行くなら駅前留学で十分だ。留学をするならそこでしか見えないもの、感じられないものを学んできなさい。」これは高校の恩師から頂いた言葉だが、まさにその通りであると思う。AFSの留学で私は人として世界にどう向き合うべきかヒントを得たのだと思う。

〔写真〕支部の仲間たちと
 トイ・ギビングをはじめとしたたくさんの経験が私の成長の糧となった。サポートしてくれた家族、先生方、友人、また支部の方たちにも感謝して、今後も成長し続けていきたいと思う。